G7長崎保健大臣会合 開催記念 認知症シンポジウム「~新時代の認知症施策推進に向けた国際社会の連携~」(5月14日)

5月14日(日)に、厚生労働省主催、日本医療政策機構(HGPI)および世界認知症審議会(WDC: World Dementia Council)の協力で、G7長崎保健大臣会合 開催記念 認知症シンポジウム「~新時代の認知症施策推進に向けた国際社会の連携~」が開催されました。

冒頭の「認知症の本人・家族からの挨拶」では、藤田代表が、「認知症の人の共生社会を創る過程は、多世代、多文化の人たちとの共生を生み出す可能性も広げる」「認知症とともに心豊かに自分の人生を生きる人が一人でも増え、よりよい社会を創っていこうという人の輪が広がるよう、世界中に、「希望のリレー」を一緒に広げていきましょう!」と挨拶しました。

また、「スペシャルコンテンツ」として、映画「オレンジ・ランプ」が紹介され、サプライズゲストの丹野さんが「認知症になっても環境がよければ笑顔で暮らせることを知ってほしい」「あきらめず希望をもって生きる本人自身についての研究もぜひお願いしたい」と話しました。

本人からのあいさつ(藤田代表)
サプライズゲストスピーチ(丹野さん)
開会あいさつ(加藤厚生労働大臣)

藤田代表のあいさつ(全文)

みなさん、こんにちは。
日本認知症本人ワーキンググループ代表理事の藤田和子です。
本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

私が45歳の時、アルツハイマー病と診断されてから、16年たちました。
この間、認知症本人の活動が広がり、全国で50名を超える認知症希望大使も誕生しています。
社会環境をよりよく変えていくために、ともに活動する人も増えています。
社会環境を変えることで、認知症の人が、自宅で暮らしていても施設で暮らしていても、初期でも重度でも、どのような状態でも、幸せに暮らせ、社会全体の活力も高まっていくことを実感してきました。

私が仲間とともに体験してきたことを通して、皆さんに次の3点をお伝えしたいと思います。

1つめは、「人は、認知症になってからも、尊厳を保ち、希望を持って自分らしく暮らせる可能性をもっている」ということです。
認知症になった自分自身と向き合い、さまざまな工夫をしながら、暮らしをつくり続けていくことによって、この可能性を広げている本人が増えています。

2つめは、「認知症本人が希望をもって自分らしく暮らす姿」によって、多様な人たちの、老いや認知症についてのイメージが前向きに変わることです。
私たちがこれまでのように、仲間と出かけたり、趣味やスポーツを続けたり、働き続ける。そんなシーンが増えることで、「ともに生きる」という共生について具体的に考えられるようになり、地域や産業界も活性化する動きが強まっています。

3つめは、共生社会を築き、持続発展させていくには、私たち本人が、施策の立案や実践、評価に参画し、「一緒につくる」ことが不可欠ということです。
日本国内では、政府及び自治体の施策に私たち本人が参画する場面が増えています。

以上3点を、私は、2014年に設立した日本認知症本人ワーキンググループの仲間とともに、提案し実行してきています。

今、医療やテクノロジーが進歩してきていますが、本人やその家族が、受診や活用をためらう現状もまだまだあります。
医療・産業の力を真に活かすためには、認知症になってからも希望を失わず生きていける共生社会という社会環境をつくることが不可欠である、と確信しています。

世界中、どこの国でも、自分の人生をあきらめず、自分らしく堂々と生きる認知症の人が、着実に増えていくことを願っています。
その願いを込めて、日本認知症本人ワーキンググループの本人たちが声を寄せ合い、2018年に発表した「認知症とともに生きる希望宣言」を紹介します。

  1. 自分自身がとらわれている常識の殻を破り、前を向いて生きていきます。
  2. 自分の力を活かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、楽しみながらチャレンジしていきます。
  3. 私たち本人同士が、出会い、つながり、生きる力をわき立たせ、元気に暮らしていきます。
  4. 自分の思いや希望を伝えながら、味方になってくれる人たちを、身近な街で見つけ、一緒に歩んでいきます。
  5. 認知症とともに生きている体験や工夫を活かし、暮らしやすいわがまちを一緒につくっていきます。

私たちは、この希望宣言を普及する「希望のリレー」を、日本政府をはじめ、民官産学、多様な人たちと活動を続けていきます。
認知症の人の共生社会を創る過程は、多世代、多文化の人たちとの共生を生み出す可能性も広げます。
認知症とともに心豊かに自分の人生を生きる人が一人でも増え、よりよい社会を創っていこうという人の輪が広がるよう、ぜひ、皆様の国で、そして世界中に、認知症とともに希望をもって 生きる「希望のリレー」を一緒に広げていきましょう!

ご清聴ありがとうございました。


<プログラム(敬称略)>

開会:加藤厚生労働大臣、UK大臣、カナダ大臣

認知症の本人・家族からの挨拶:

・藤田 和子(日本認知症本人ワーキンググループ 代表理事)

・鈴木 森夫(認知症の人と家族の会 代表理事)

・田中 豊(認知症本人大使「ながさきけん希望大使」)

パネルディスカッション1「共生」:

 座長:鳥羽 研二(東京都健康長寿医療センター 理事長)

 Paola Barbarino(CEO, Alzheimer’s Disease Internationa (ADI))

 Joanne Pike(President and CEO, Alzheimer’s Association)

 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター 認知症未来社会創造センター センター長)

 Fiona Carragher(Director of Research and Influencing, Alzheimer’s Society)

パネルディスカッション2「リスク低減とイノベーション」:

 座長:秋山 治彦(国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED))

 岩坪 威(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻 神経病理学分野 教授)

 Bart De Strooper(Professor, UK Dementia Research Institute, University College London)

 Philip Scheltens(Chair, World Dementia Council (WDC))

 George Vradenburg(Founding Chairman, Davos Alzheimer’s Collaborative (DAC))

スペシャルコンテンツ:

 ・WHOからメッセージ

 ・映画「オレンジ・ランプ」紹介・メッセージ(丹野智文)

閉会:

 Lenny Shallcross(Executive Director, WDC)

 黒川 清(日本医療政策機構 代表理事/WDC 副議長)