どこで暮らしていても、尊厳と希望をもってよりよく暮らしていけるために

1. 本人同士が集まり、支え合いながら前向きに生きていくための拠点となる場を、すべての市区町村で一緒に作っていきましょう。何かを提供される受け身ではなく、わたしたちが主体的に活動できる場であることが大切です。

○ 医療や支援を受けていたとしても、仲間と出会え、気兼ねなく語り合える場、支え合いながら自由に活動できる場がないために、一人で悩み孤独に陥って状態を悪くし、必要以上の医療や介護サービスを受けざるを得ない人がたくさんいます。

○ 私たちは、認知症という周囲には理解してもらいにくい状態の中で生きている仲間に早く出会い、体験や知恵を分かち合いながら、希望をもって生きていきたいです。

○ 私たちには、自信を取り戻す場が必要です。自信を取り戻すことで、「自分」を取り戻し、自分なりの人生をよりよく生きていくことができるようになります。

○ 一日も早く、すべての市区町村で、私たちが集まり主体的に活動していくための拠点となる場が必要です。すでにそうした場があるなら、その活動が継続できるバックアップをして下さい。

○ そうした場に早くつながれば、支援を受ける立場としてではなく、主体的に活動することができる人が増えていきます。場をつくるだけでなく、本人が診断後速やかに、それらの場につながることができる流れ(しくみ)を、市区町村として整えて下さい。

2.私たちが外出することを過剰に危険視して監視や制止をしないで下さい。
「安心して外出を楽しみ、無事に帰ってこられること」「地域の中で自分のやりたいことを続けること」を、すべての人があたりまえの行為として考え、ごく自然な見守りや支えができる地域社会を、一緒に作っていきましょう。

○ 私たち一人ひとりは、自分なりの理由や目的があって外に出かけます。見守りや声かけなどちょっとした支えがあることで、外出を楽しみ、地域とつながり、充実した生活を送れている人も増えてきています。働き続けている人もいます。

○ 「認知症だと外出は危険」という一律の考え方や、過剰な監視や制止は、私たちが生きる力や意欲を著しく蝕みます。それらはまた、認知症の人への社会全体の偏見を強め、これから老いを生きていく多くの人たちが、尊厳と希望をもって生きていけなくなります。

○ 「安心して外出を楽しみ、無事に帰ってこられること」「自分のやりたいことを続けること」を、暮らしの中の「あたりまえ」と考える人たちを一緒に増やしていきましょう。

○ どんな見守りや支えがあったらいいか、その町や地域で暮らす本人や家族の具体的な声をよく聴いて下さい。それらをもとに、一人ひとりにあった見守りや必要な支えについて、一緒に話し合っていきましょう。

○ 私たちも、外出時は自ら「ヘルプカード」を持参するなど、自分なりにできることに取り組んでいきます。どこに住んでいても安心・安全に外出できる地域となるための具体的な取り組みを、本人と家族、そして地域の様々な人たちが力を合わせて進めていきましょう。

3.本人自身が安心・納得できる診断と治療が受けられ、診断直後に「今後の自分の暮らし」について親身になって相談にのってくれる人に私たちは出会いたいです。
初期の段階で本人がその後をよりよく生きていくために必要な医療や相談に確実につながる流れ(仕組み)を、すべての市区町村で一緒に作っていきましょう。

○ 早期診断・治療が推進されるようになりましたが、暮らしている身近な地域で、本人が  安心して受診ができ、わかりやすい(やさしい)説明を受けながら納得して治療を受けられるようにはまだまだなっていません。

○ 専門医療機関はもちろん、地域にあるすべての医療機関が、本人や家族にわかりやすく(やさしく)適切な対応をできるようになるような取組みを拡充してください。

○ 医療機関を受診し診断を受けたものの、その後をどのように暮らしていっていいのか、自分のその後の暮らし方について具体的に相談できる人につないでもらえなかった人がほとんどです。

○ そのため、まだまだ力のある初期の時期に、絶望してひきこもったり、よりよく暮らしていくための諸制度やその地域にある支援を知らないまま、生活や心身の具合が一気に悪くなってしまった体験をしている人がたくさんいます。

○ 私たちには、診断・治療も必要ですが、それと同時に親身になって話を聴いてくれ、話し合いながら一人ひとりにあった制度や支援をつないでくれる存在が不可欠です。

○ 特に初期の頃に、どのような医療や相談があったらいいのか、本人たちの声をよく聴いて下さい。本人たちが希望を失わず、その後をよりよく暮らしていけるために必要な医療や相談に確実につながれるよう、それぞれの市区町村なりの流れ(しくみ)を、丁寧に作って下さい。

4.「制度やサービスがない」でおしまいにしたり、たらいまわしにせず、どうしたらよりよく暮らせるかを、まずは一緒に考えて下さい。
私たちをひとくくりにせず、一人ひとりの思いと力を活かしながら、よりよく暮らしていくためにお互いができることを見つけ、一緒に進んでいきましょう。

○ 「なんでもお気軽に相談を」とうたっている行政や地域包括支援センター等の相談窓口が増えてきています。それをようやく探しあて相談に行ったとき、「利用できる制度やサービスはない」、「別のところに相談にいって」と言われてしまった人が多くいます(特に初期や年齢が若い場合)。

○ あるいは、介護保険サービスの一覧をいきなり渡されて、まだ必要もない介護サービスの紹介だけをされておしまいとされた人も多くいます。

○ そうした対応をされることで、私たちや家族は更に戸惑い、途方に暮れてしまいます。前向きに暮らしていけなくなると同時に、今日明日の暮らしに実際に困り果ててしまいます。

○ 認知症があっても、一人ひとりが違います。認知症の本人をひとくくりにしないで下さい。一人ひとりの困りごと、そして、できること、やりたいこと、望むことが同じではないことを、市区町村の相談にあたる人や支援の関係者、地域の人に、しっかりと浸透を図って下さい。

○ 私たちが相談にいくのは、藁をもすがる思いです。「どうしたら私や家族が、自分たちの力を大切に活かしながら、少しでもよりよく暮らせるか」をどうか一人ひとりと一緒に考え、一緒に動いて下さい。
5.すべての自治体の認知症の施策や取組みを企画する過程で、私たちの声や力を活かして下さい。私たちと一緒に進めていきましょう。

○ 最近、認知症ケアパスや認知症カフェ等を作る過程で、本人が委員として参加し、本人が意見をのべ、それを具体的に制度やしくみに反映させる自治体が出始め、わたしたちにとって大きな希望です。

○ すべての自治体で、出来上がってからではなく、作りだす過程でこそ、本人の声や力を活かして下さい。認知症と共に生きているわたしたちの声や力を活かして、当事者に実際に 役に立つ効果的な施策や取組みを、一緒に作っていきましょう。