地域における実践的な「認知症バリアフリー」の取組の推進に関する調査研究事業
当法人では、令和3年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)として、「 地域における実践的な『認知症バリアフリー』の取組の推進に関する調査研究事業 」を実施いたしました。(令和4年3月)
<事業報告書>
ダウンロードはこちらから(PDFファイル:約9MB/A4判・170ページ)
<事業概要(サマリー)>
1.事業目的
全国における認知症の人本人が抱える障壁の解決に向けた取組の実態を調査するとともに、認知症の人が自ら暮らす地域の中にある障壁を本人の視点から具体的に明らかにし、その解消のための取組を自治体やその地域の人たち(事業体・団体・住民等)とともに進めていくためのモデル事業を実施し、モデル事業の成果をもとに、全国で取り組むためのアクションガイド等の推進ツールを作成し、地域における本人視点にたった実践的な認知症バリアフリーを推進することを目的とした。
2.事業内容
(1)検討委員会の設置・開催:全3回、オンライン開催
(2)認知症バリアフリー全国調査の実施
(3)モデル事業の実施(9地域13団体:自治体を含む)
・モデル地域ミーティング(試行地域会議)開催:全2回、オンライン開催
・モデル地域ワークショップ実施:4地域、オンライン開催(一部、現地開催、併用型)
(4)「わがまち認知症バリアフリーアクションガイド」作成(WEBコンテンツ連携)
(5)事業報告WEBコンテンツの作成・公開(報告会開催の代替)
3.事業結果
■認知症バリアフリー全国調査
都道府県・認知症疾患医療センター・市区町村を対象に、施策・事業における認知症バリアフリーに関する取組み状況及び認知症本人の参画に関する調査を行った。
○調査回答数:
①都道府県 42/47(89.4%)
②市区町村 878/1741(50.4%)
③認知症疾患医療センター 224/488(45.9%)
○主な調査結果
「自地域の認知症の人の日ごろの暮らしの様子について、情報を得る機会」
「本人から直接」は、
①都道府県が、30(71.4%)、
②市区町村が、724(82.5%)、
③認知症疾患医療センターが、223(97.8%)だった。
「得る機会は無い」は、都道府県が、3(7.1%)、市区町村が、12(1.4%)、認知症疾患医療センターが、1(0.4%)だった。
「認知症バリアフリー推進等において、本人視点の反映での課題」
都道府県は「本人の意見や力を活かすための事業を実施する余裕がない」が最も多く、23(54.8%)だった。市町村は「本人の送迎や付き添う人の確保ができない」が、664(75.6%)、「家族等が本人の代わりに話す場合が多く、本人自身の声・意見を聞けないことが多い」が、541(61.6%)だった。
「認知症バリアフリー」について(自由記述)
「一番のバリアは、自分が認知症であると周囲に伝えることができないこと」「行政サービスにもバリアがたくさんある」等、バリアそのものへの考え方や見方に対する意見も様々寄せられた。
■モデル事業(バリアフリーシートの地域試行)
「本人の今とこれからの暮らしのバリアフリーシート」を各地域の地域包括支援センター、ケアマネジャー等が共通のツールとして活用し、認知症の本人の変化、支援等の変化を情報化し、地域で本人のよりよい暮らしに向けた活用を9地域で検討した。
取組状況をふまえ、4地域ではそれぞれの取組主体にあわせたワークショップを企画・実施した。
シートの試用を通じて、本人が大事にしている日々の「今の暮らし」の確認、これまで周囲に知られていなかった「今の暮らし」を続けていくための「さまざまな本人自身の工夫」があることが次々と明らかになり、ケアプラン等にもつながる情報としての重要性を確認・認識する声が挙がった。また、各地域で実際に「本人の今とこれからの暮らしのバリアフリーシート」を活用したメンバーへのヒアリングでは、これまで認知症の本人への支援者側の先入観とその先入観にもとづく支援が、その本人にとっての「暮らしのバリア」となってしまっている可能性があることが意見として提示された。
<本人の今とこれからの暮らしのバリアフリーシート>